全国の電力会社10社の4~9月期連結決算が10月31日に発表された。原子力発電所を保有するのはそのうち9社だが、8社が最終赤字となった。そのうち北海道電力、東北電力、四国電力は電気料金の値上げを年内に決断する見通し。原発事故がない地域にも、値上げの動きが広がっている。

10社の燃料費の総額は4兆8000億円。東日本大震災前の同時期は2兆8000億円であり、約71%増加した。原発の再稼働を判断する内閣府の原子力委員会は、新たな安全基準づくりに時間がかかるとして、再稼働は来年以降になる見通しだ。

今後も電力会社の燃料費が増加すれば、家庭や企業への負担は重くなる一方である。消費税の増税と相まって、景気を押し下げる要因になりかねない。

さらに、冬季の電力不足がもたらす影響も懸念されている。

1日付日経新聞は、「余力は火力1基分」との見出しで、北海道の事例を紹介。総出力が207万キロワットの泊原発1~3号機が停止したままの北海道電力は、来年2月の余剰電力が33万キロワットになると予想されている。これは火力発電所1基分だが、火力発電所はトラブルが多い。どこかが停止すれば、停電になる可能性がある。

これに対し、政府は北海道内に2010年比で7%以上の節電を要請する予定だ。しかし、冬の北海道は、1日中暖房を使うため、電力需要が一日中高い。また、道路や駐車場、鉄道のレール、屋根に積もった雪を溶かす設備を動かすためにも電力が使われている。万が一、電力が不足してしまうと、生活や経済活動に予想以上の影響が出る可能性がある。

「脱原発」をうたう勢力は、「原発稼働なしでも電力は足りていた」と、原発の廃止を正当化しようとする。しかし、今年の夏には、全国で8000人以上の人が熱中症で運ばれ、死者も出た。北海道経済同友会の坂本真一代表は、「冬の電力不足は一歩間違えば命の問題になる」と電力不足を危惧している。

このように原発の停止が日本社会全体に及ぼす影響は大きい。本欄でもたびたび指摘しているが、今回の福島原発の事故で放射能が原因で死んだ人は一人もいない。人命に関わる「極寒期の電力不足」を避けるため、電力供給に余裕を持つためにも、日本全国の原発を早期に再稼働すべきである。(晴)

【参考記事】

2012年10月25日付本欄 【新聞読み比べ】放射性物質拡散予測マップ いたずらに不安を煽るな

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5064

2012年10月22日付本欄 原発停止で電力五社が来春から値上げ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5030