28日付朝日新聞に小説家の村上春樹氏の寄稿が掲載(3面)され、1面トップでそれが紹介された。日本政府が尖閣諸島を国有化したことを受けて、北京市では17日以降、日本人作家の出版が規制され、店頭からも消えていた。これについて村上氏は「少なからぬショックを感じている」と語り、日本が中国・韓国に対抗措置を取ることを批判している。要旨は以下の通り。

  • ヒトラーも政権の基礎を固める際に、失われた領土の回復を根幹に置いている。
  • 自分はかつてノモンハン事件の戦争跡地を訪ね、「どうしてこんな何もない不毛な一片の地を巡って、人々が意味もなく殺し合わなくてはならなかったのか?」と、無力感を感じた。
  • 中国に対しては意見を述べる立場にはないが、(日本は)中国側の行動に対して、どうか報復的行動を取らないでいただきたい。そんなことをすれば、我々の問題として、我々自身に跳ね返ってくる。
  • 多くの人が血のにじむような努力をして作ってきた「魂が行き来する道筋」は、何があろうと維持し続けなくてはならない。

要するにこう読み取れる。「尖閣諸島や竹島などの小さな島を巡って戦争になるのは意味のないことだし、強硬姿勢を取る政治家はヒトラーにも似ていて危険だ。日本は中国・韓国に対して強硬姿勢を取って事態を荒立てるべきではない。苦労して築きあげてきた東アジア文化圏を守らなければならない」

しかし、中国や韓国による尖閣諸島・竹島の領有権主張は、国際法的にも認められるものではない。その証拠に、両国は国際司法裁判所での裁判を徹底的に拒否している。東アジアの文化交流が断たれることを危惧するのであれば、村上氏が批判すべきは、本来、国際ルールを無視した暴論を主張している中・韓両国である。

朝日新聞は、これまでは事あるごとに大江健三郎氏の論説を載せ、自虐史観に基づく、憲法9条の堅持や原発反対といった自社の主張を代弁させてきた。今度は、世界的に人気のある村上氏を担ぎ出してきたと考えられる。人気作家に「文化交流を断たれるのは困る」と言わせ、中国・韓国の侵略行為への日本の対応をファジーにしようとしているようだ。

だが中国は、たとえば侵略によって自治領とした内モンゴルで、モンゴル語を使わせず、モンゴル文化を滅ぼす方向の施策をとっている。村上氏は、果たして中国のこうした文化弾圧を知ったうえで書いているのか。国の主権と伝統文化そのものを奪われることは、文化交流の断絶よりはるかに恐ろしいことを認識すべきである。(晴)

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