ニューヨークを訪問中の野田首相が、「尖閣に領土問題は存在せず、妥協する考えはない」などと発言したことについて、経団連の米倉弘昌会長が批判している。北京を訪問中の米倉会長は、「相手が問題と言っている以上、それを解決するのがトップとしての役割」などと話した。

米倉会長の訪中は冷え込んだ日中関係の改善を呼びかけるためのもので、27日には全国政治協商会議の賈慶林主席とも会談している。帰国後には野田首相に、日中関係改善のための具体策を進言する予定だという。中国国内の反日デモで、日本企業の焼き討ちなどの蛮行が相次ぐ中、米倉会長は経済界としてこれ以上の損失を避けたいという意図を示したものと思われる。

しかし、中国での商売の利益を優先するあまり、経済界が売国的な政策を後押ししてきたことは非難されるべきだ。日中関係深化を望む経済界は、2009年に民主党の政権交代を応援。新政権は、沖縄基地問題に代表される日米同盟の迷走や、尖閣周辺での中国海軍の活動を助長する結果を招いた。

今回の反日デモでも、暴徒の襲撃を恐れたユニクロ上海店が「尖閣は中国の領土」という張り紙を店頭に掲げたことに批判の声が上がった。自社の利益を最優先して、国益を害する日本企業の姿勢は、あまりに節操がない。

アメリカを西太平洋から追い出そうと中国が画策する中で、日本が融和姿勢しか取らないのなら、やがて日本は中国の属国となる。それこそが、見せかけの「日中友好」に潜む、最大の「カントリー・リスク」である。商売上の利益を押し通し、国の外交政策を操縦しようとすれば、国を滅ぼすことになりかねないということを、経済界は理解しなければならない。

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