北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射を巡り、防衛省が検証報告書案をまとめた。ミサイルをより探知しやすくするために、発射予告があれば海上自衛隊のイージス艦を、朝鮮半島にほど近い黄海に配備する、と30日付朝日新聞などが報じている。

ギリシャ神話のアテナの楯の名前を冠する「イージス艦」は、米軍が開発した艦隊防空システムを搭載する艦艇の総称で、四つの特徴を持っている。

400km先から一度に多数のミサイルや航空機を捕捉可能なこと、複数の搭載兵器を統合して指揮ができること、他の艦とのデータリンクがスムーズに行えること、敵の探知・分類・交戦が人を介せず高速で行えることだ。海上自衛隊は1993年以降に配備された「こんごう型」を4隻、2007年以降に配備された「あたご型」を2隻保有している。

弾道ミサイル迎撃において、海上自衛隊のイージス艦は先鋒として使用される。「こんごう型」に続き、新鋭の「あたご型」2隻も、イージスシステムによってミサイルを探知、搭載する対弾道ミサイル迎撃用ミサイルSM-3によって、地上に再突入する前に大気圏外で迎撃する。

2009年に行われた北朝鮮のミサイル発射実験においては、「こんごう型」2隻が日本海に配備された。今年4月13日の実験では「こんごう型」1隻が日本海に、2隻が沖縄周辺海域に配備されたが、ミサイル迎撃優先のため、黄海への配備は見送られた。

しかし、日本政府は発射時の確認の遅れから、公表を発射から約40分後にするという失態を演じ、その教訓から今回の検討に至った。

中期防衛力整備計画(平成23~27年度)において、自衛隊は「守りの防衛」から「動的防衛」への転換を謳っている。実効的な抑止および対処、アジア太平洋地域の安全保障環境のいっそうの安定化、グローバルな安全保障環境の改善などが柱になっている。

前回の失敗を挽回するために、おそらく北朝鮮はまたミサイル発射実験を行うだろう。核実験をすでに2度もおこなっており、ミサイルに核兵器を搭載できる日も近付いている。日本としても前回のような失態を繰り返してはならない。イージス艦の黄海配備だけでなく、中期防衛力整備計画にあるように米韓との連携、防衛力のさらなる強化――アメリカからの核兵器のレンタルや現行憲法の9条の解釈変更も含めて――が早急に必要だ。(悠)

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2012年4月13日付本欄 ミサイル発射失敗は、北朝鮮の「終わりの始まり」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4121