サルコジ氏を破ってフランスの新大統領になったオランド氏が公約に掲げた「富裕層向け増税」。早くもそれを嫌気した富裕層がフランスから脱出しようとしている。12日付ブルームバーグ日本版などが報じている。

フランスの新大統領は社会党のオランド氏。ユーロ圏の経済危機の中で、サルコジ大統領の緊縮財政路線に反発したフランス国民は、「雇用と成長の重視」を主張したオランド氏を選んだ。

確かに、「緊縮財政だけでは景気が冷え込み、雇用や賃金も悪化する」というオランド氏の主張は正しく見える。しかし、その象徴的な公約として「富裕層や企業への課税強化」を掲げ、それにフランス国民が乗ったところが、基本的に間違っていると言える。

つまり、富裕層を「狙い撃ち」して、多数派の中間層、貧困層の票を集めたわけで、まさしく社会主義の政策だ。オランド氏は年収100万ユーロ(約1億317万円)超の富裕層の所得税率を75%に引き上げると表明している。

世界で5番目に裕福な国であるフランスには、高級ブランドのトップなど世界屈指の富豪が住んでいるが、今、周辺国への脱出を検討する人が増えているという。

一方、イギリスでは逆に富裕層の減税を実施。4月から最高所得層に対する税率を50%から45%に引き下げた。「ロンドンはフランスの皆さんを歓迎します」とメッセージを送っている。

日本でも増税路線が敷かれ、所得税や相続税など「富裕層への課税強化」が盛んに言われている。

だが、いつも政治家が陥りやすい罠が、少数派の富裕層をいじめて、他の多数派の支持を得るというやり方だ。

因果の理法から見れば、富裕層を憎む国は貧乏になり、むしろイギリスのように減税して「富裕層を呼び込む」ことが結果的に国の繁栄につながっていくことを、日本のトップも知るべきだろう。(仁)

【関連記事】

2012年5月9日付本欄 左派の大統領誕生でフランスが直面する挑戦とは

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4268

2011年12月30日付本欄 民主、消費税増税を決定 富裕層への累進課税も強化

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3621