現在、唯一稼働中の泊原子力発電所3号機(北海道電力)が5月5日に定期検査に入ることで、日本にある原子力発電所は54基全てが停止することになるため、政府は、福井県の大飯原発3、4号機(関西電力)の再稼働に向けた取り組みを続けている。だが、大阪市の橋下徹市長を始め、滋賀県の嘉田由紀子知事、京都府の山田啓二知事が、事故があれば被害を受ける「地元」として、再稼働に反対の意向を強く表明している。

特に大阪は、府市統合本部が「原発再稼働に関する八条件」を出して、政府や関電に対して、原発の安全性を厳しく問いかけ、10日に行われた「府市エネルギー戦略会議」では、関電に全原発の廃止などを同社の定款に盛り込むよう、株主提案することを正式決定した。

大阪府市統合本部が公表した「原発再稼働に関する八条件」は下記の通り。

1) 国民が信頼できる規制機関として3条委員会の規制庁を設立すること

2) 新体制のもとで安全基準を根本から作り直すこと

3) 新体制のもとで新たな安全基準に基づいた完全なストレステストを実施すること

4) 事故発生を前提とした防災計画と危機管理体制を構築すること

5) 原発から100キロ程度の広域の住民同意を得て自治体との安全協定を締結すること

6) 使用済み核燃料の最終処理体制を確立し、その実現が見通せること

7) 電力需給について徹底的に検証すること

8) 事故収束と損害賠償など原発事故で生じる倒産リスクを最小化すること

5の「原発から100キロ程度」は、大飯原発の場合、福井・京都・滋賀のほぼ全域から、兵庫の東半分、大阪の北半分、岐阜、奈良、三重県の一部までを含む広範囲に及び、圏内の知事に「拒否権」を与えることまで含めたいらしい。原発を全停止しなければ実現できないような「高いハードル」を設定しているといわざるを得ない。

橋下市長は、持論の「地域主権」「民主主義的な手続き」「民意の反映」を盾に、あくまでも原発全停止を実現したいとの考えだ。また、「脱原発」の考え方の是非を、「大阪維新の会」が次の衆院選を戦う際に有権者に問うつもりのようだ。

しかし、大川隆法・幸福の科学グループ創始者兼総裁は、3月25日に行われた「未来を開く悟りの力」の法話の中で、「大阪都というのが勝手に国政を二分して動き始めたら、統制がつかなくなります」「今は、地方を強くする時代ではなくて、国家としての主権を固めないといけない時だと思います」と指摘している。

大局観を持てない不甲斐ない中央の政治に対して、国民はいらだちを覚えているが、だからといって安易に「地域主権」の方向へ舵を切るのは危険であることを、知っておかなければならないだろう。〈宮〉

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