東京電力は26日午前0時頃、新潟県の柏崎刈羽原発6号機を定期検査のために発電を停止した。これで東電の保有する原発17基すべてが停止したことになる。

これにより夏場には最大で13%超の電力不足が生じる可能性があるという。

5月上旬には北海道電力の泊原発3号機も止まるため、それまでに再稼動する原発がなければ、ついに国内の54基の原発すべてが止まることになる。

イラン情勢が緊迫し、石油の輸入も危ぶまれる中での全原発停止に、日本の電力供給の体制は益々脆弱になる。

一刻も早い原発の再稼動が求められよう。

それにしても、この1年間の原発の風評被害、報道被害には目を覆うものがある。そこで、もう一度、基本的な数字を押えておきたい。

今回の東日本大震災によって、約2万人の犠牲者が出ているが、原発事故による死者はただの1人もいないということだ。

あれだけの地震でありながら、1人の犠牲者も出さなかったことは誇っていい。実際に、日本の原発を輸出する動きがあるが、それは日本の技術の安全性が評価されているからだ。

リスク管理の専門家である藤沢数希氏が著書『「反原発」の不都合な真実』で興味深い指摘をしているので、本欄でも少し紹介したが、改めてその内容に触れてみる。

各発電方法による犠牲者の比較だ。

原発の場合、チェルノブイリの事故での死亡者を4000人とした場合(諸説あるが多めの推計値を採用)、原発の歴史が約50年であることを考慮すると、1年当たりの原発による死者数は80人ということになる。

一方、石炭や石油をつかった発電はどうか。

WHO(世界保健機関)によれば、世界で大気汚染が原因で死ぬ人の数は1年間で115万人。そのうちの3割が発電所からの大気汚染物質が原因という(半分は自動車の排ガス)。

従って、石炭・石油による発電での1年間当たりの死者数は30万人になる。

1年間で80人犠牲者が出る発電方式と、30万人超の犠牲者が出る発電方式とどちらが安全か。言うまでもなく原発の方が安全ということになる。

脱原発を図って、石炭・石油の発電に戻せば、死者数は増えることになる。

死者数は安全性の最大の目安だから、脱原発の流れは、なんとも危険な判断である。

構造としては、「自動車と飛行機とどちらが安全か」の議論に似ているところがある。イメージとしては飛行機の方が危険そうに見えるが、実際は飛行機の墜落で死ぬ人の数は極めて少ない。自動車の方が圧倒的に危険だ。

「原発=原爆」といったイメージから、原発は危険だという思い込みがあるが、冷静に判断する必要があるだろう。(村)

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