映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」が、3月16日から日本で公開される。

「英国病」と呼ばれた「行きすぎた社会保障制度や基幹産業の国有化等により、国民の勤労意欲が低下し、経済と社会の停滞を招いた」状態に対し、「国有企業の民営化や規制緩和、所得税等の大幅な税率の引き下げという『新自由主義政策』を実施し、英国経済を立て直した救世主」と言われている女性の伝記映画である。

驚くのは、遠い異国の物語のようでありながら、これから日本が向かおうとしている状況が、当時の英国と極めて近い、と再認識させられることだ。基幹産業である東電の国有化、「税と社会保障の一体化」という名の下の大幅増税……。それがどういう結末をもたらすかは、「英国病」について学んでみればすぐに分かる。

予告編でも、アルゼンチン軍のフォークランド諸島への侵略に対し、「フォークランド諸島は英国領よ」と語るシーンがあるが、これが中国の尖閣諸島への"侵略"を彷彿させる。

当時のサッチャー氏の言葉として、「人命に代えてでも我が英国領土を守らなければならない。なぜならば、国際法が力の行使に打ち勝たねばならないからである」というものが残っているが、これは領土とは何か、侵略を企む国に対してどう対処するべきか等を考えるに際に重要な示唆を与えてくれる。

また、この映画は、単なる政治家としてのサッチャーを描いたものではない。

使命のために生きる女性が避けて通れない、家族との軋轢や苦悩もまた感動的に描かれている。演じるのは、「プラダを着た悪魔」において絶妙な演技で上司を演じたメリル・ストリープ。本作品では84回アカデミー主演女優賞を受賞した。

来日したメリル・ストリープは、「この映画をこの時期に日本に持って来られて感動」と語っているそうだが、この映画はもしかしたら、今の日本に対するマーガレット・サッチャーその人からのメッセージかもしれない。(黒)

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