欧州危機が泥沼化しそうな気配だ。24日付各紙の報道によると、EU(欧州連合)の執行機関の欧州委員会のバローゾ委員長が、新たな財政規律強化案を提案した。主な内容は次の通り。

  • ユーロ圏17カ国の各議会に、予算案を上程する前に報告をEUに求める。
  • EUの「財政審査官」を強制的に派遣する。
  • 重債務国の資金調達を支援するため、ユーロ共同債も検討する。

いずれも、ユーロ圏の財政統合に向けた提案。単一通貨を導入し、金融政策を一致させても、財政政策が各国でバラバラなので、経済危機にうまく対応できていないというわけだ。

しかし、この流れは、結局、ユーロ圏を一つの国にするところまで持っていくしかなくなる。ユーロ圏が一つの国家になれば、所得の再分配が容易になる。豊かな国から貧しい国に分配するのは政治的に困難だが、一つの国の中で、豊かな地域と貧しい国を平準化するのは比較的容易だ。EUの政治統合を目指す考え方の背景には、こうした社会主義的理想を追い求める心がある。

だが、それだと、みんなでドイツにたかるだけの構造になる。いくらなんでもドイツ一国で16カ国は背負えない。23日にドイツ国債の入札が、調達予定額に対し応募が大幅に下回る異例の札割れを起こしたのは、その不安が表面化したものだろう。

今、ユーロという大きな船がゆっくりと沈もうとしている。(村)

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http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3303