国際ジャーナリストのビル・エモット氏が米ニューズウィーク誌3月28日&4月4日合併号に、今回の日本の大震災の影響について論考を寄せている。アジア経済に強い同氏だが「経済面における影響はさほど重要ではない」としており、日本のメディアや論者にありがちな横並びの論調と一線を画している。以下、抜粋紹介。

・  過去の例を見る限り、災害後の経済面は心配いらない。阪神大震災の時も05年の米カトリーナ・ハリケーンの時も、短期的には生産高が下がるが数ヶ月経てば再建需要が起こり、災害はむしろ経済刺激策として働く。1990年代半ば以降の日本経済のパフォーマンスが貧弱だといっても、日本の70年代や80年代に比べればの話だし、国の借金が多いといってもほとんどは対国内債務である。日本経済は十分立ち直れる。

・  そもそも、国情を測る尺度としてGDPには限界がある。生産高や経済活動がどうなるかはGDPを見ればわかるが、国民の福祉や幸福についてはGDPを見ても何一つわからない。今回の災害も経済的悲劇ではなく人間の悲劇であり、災害の引き起こした政治的・心理的な影響のほうが経済問題よりはるかに重要である。

・  日本は世界も認める回復力に富んだ社会で、国民は我慢強く、連帯感も強い。だが過去5年間の日本の政治状況は、混沌として機能不全を起こしている(chaotic and dysfunctional)。国民一般は政治家や政府に幻滅している。歴史的政権交代と騒がれた民主党政権も、とんだ期待はずれ(big disappointment)だった。災害後の復興において、国民が信頼できる政府かどうかは非常に重要。

・  今後の復興は5年が目安で、10年単位ということはない。今の日本に大切なのは、心理的に内向きにならず世界との関係を深めることだ。未曾有の災害で内政に専念せざるを得ないとしても、日本がそれで終わらないことを望む。世界にとっては、日本が忙しく活動してくれている(engaged and active)ことこそ好ましい。

日本は底力があり、必ず立ち直れる。災害後の国民の心の持ち方こそ肝心であり、政府の責任も重い。国際社会は日本の立ち直りを待っている――。外国人の目から見た公平で厳しく、かつ温かいエールではないか。(司)

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