チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(75歳)が10日、チベット動乱から52年目に際し、インドにあるチベット亡命政府の政治指導者としての地位を退く考えを表明した。14日から始まる亡命政府議会で正式に提案するという。

亡命政府は今月、議会・首相選挙を実施し、次期首相に政治権限を委譲し、自由選挙によるチベット社会の民主化を促すのが狙いと言われている。

また、ダライ・ラマ14世はその年齢からも、後継者を急ぎ探す必要がある。伝統的には、ダライ・ラマの死後はその死亡時期あたりに生まれた者を探し出し、パンチェン・ラマ(ダライ・ラマに次ぐ高位)がその転生者を次代ダライ・ラマとして認定する。しかし、現在のパンチェン・ラマは、ダライ・ラマ14世が認定した少年ではなく、中国政府が勝手に担ぎ出した少年だ。このままでは、次代ダライ・ラマを指名するのはそのパンチェン・ラマであり、また中国政府公認の人物になるのは確実。亡命政府は中国政府に乗っ取られることになるだろう。

今回の引退表明は、そうした中国の狙いを見越し、本当の後継者を育てておくためか。ダライ・ラマ14世はこれまでも何度か引退表明をしているが、将来、亡命政府が中国に飲み込まれずに生き残れるか否かは、この引退と選挙にかかっているかもしれない。(吉)

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