2011年3月号記事

寄稿 オピニオン

「新しい公共」を阻止しない日本の危機(上)

「地域主権」は、市町村(地域)の

共産コミューン(主権ある準・独立国家)化の手段

嶋田陽一(政治学者)

二〇〇九年八月末の総選挙で圧勝し、民主党は初めて政権の座を奪取した。その後の民主党は、内閣支持率の低下にもかかわらず、政党支持率では自民党の二倍以上を維持してきた。が、二〇一〇年九月に発生した尖閣列島への中国漁船の不法行為とその「犯罪人」船長を中国の内政干渉に屈して無罪放免したことがきっかけで、二〇一〇年秋、突然、民主党は有権者の支持を半減させ、自民党の政権奪還の可能性が浮上してきた。

しかし、鳩山由紀夫の民主党内閣が誕生した二〇〇九年九月から今日まで、自民党は、民主党が我が国にとっていかに危険な政党であるか、真っ正面からの民主党糾弾など一度もしなかった。有権者の民主党離れはすべて、鳩山前首相の普天間問題迷走、小沢一郎の金権スキャンダル、小沢と菅の党内抗争、菅首相の指導力欠如など、民主党のオウン・ゴールで発生した。自民党が、民主党の危険で怖ろしい本性を国民に訴えた結果ではない。

これでは、自民党が仮に次の総選挙で政権を奪還した時、民主党が推進した、日本という国家を機能不全に陥れる極左革命の諸政策はそのまま継承される。その害毒は、半永久的に日本を蝕み、治癒不能のままに必ず日本の崩壊を加速させていく。

ここで取り上げるのは、民主党が日本を毒した多くの政策のなかでも日本国を確実に破壊し尽くす「新しい公共」という、レーニンのロシア革命(一九一七年十一月)に相当する過激な共産革命である。日本では、一九九一年末、ソ連邦の共産党独裁体制がくずれたことをもって、「共産主義は致命的に退潮した」とか、「二十一世紀に〈共産革命が推進されている〉など、時代錯誤の杞憂に過ぎない」とかの嘘宣伝が、日本人の無知と無関心につけこんで、大量に繰り返し流され、定着した。

が、二十一世紀の世界で信じがたい逆現象が、日本のみで起きていた。それが、世界の奇観ともいえる、日本における“新しい共産主義革命、すなわち赤色でない透明な共産主義革命”の大暴走である。「新しい公共」はそのトップ・アジェンダである。