義務教育でも留年? 橋下市長の大胆な教育改革案の真意は?

2012.02.25

地域政党「大阪維新の会」が発表した「船中八策」の柱の一つに教育改革があるが、同会の代表、橋下徹大阪市長は22日、「小中学生が目標の学力水準に達しない場合、進級を認めず、留年させることを検討するよう市教委に要請した」と明らかにし、同日夜の教育委員との意見交換会で提案、意見を求めた。

義務教育期間中の留年については、法的には「各学年の修了や卒業は児童生徒の平素の成績を評価して認定するよう定めており、校長の判断次第では原級留置(留年)も可能」とされているので問題はない。

とはいえ、同年生まれの児童・生徒が一斉に横並びで進級していくことが常態である日本の学校教育の環境で、子供や保護者に受け入れられるのかどうか、疑問視する声も少なくないようだ。

橋下市長は、「留年制度でプレッシャーを与えるということではなく、学んだかどうかに関係なく進級させることで、かえって子供たちに害を与えてしまっている。理解できない子には分かるまで教えるのが本来の教育だ」と、22日の日中の記者会見で述べていた。

実はこの「留年」については、「尾木ママ」の愛称で人気の教育評論家・尾木直樹氏が学力の底上げ策として、20日付の読売新聞夕刊で提唱していたものなのだが、これまで尾木氏の考えには批判的だと思われていた橋下市長が賛同を示したということで、尾木氏自身も驚いたようだ。

しかし、橋下市長は、22日夜の教育委員会との意見交換会が終わった後の記者会見では、「科目ごとの習熟度別クラスを作るとか、特別学校を作って一定期間そちらで集中的に特訓するとか、現行法制の中でやれる現実の対応を考えていきます」と具体的なアイデアを出していた。

一方、尾木氏は「一斉主義、履修主義の日本では、学習でつまづいて落ちこぼれた子供もそのまま卒業させたり進学させてしまうので、習熟主義で、個々の子供の習熟度に合わせた個別教育に切り替えるきっかけになればよいと思っている」「コストはかかるが、アジア諸国の学生たちに負けるような、日本の追い詰められた今の状況をなんとかしなければならない」などと、23日のテレビ番組で補足説明し、「お役に立つなら協力したい」旨を述べていた。

尾木氏や橋下市長の真意は、「勉強が分からなくなっている子供を無責任に放り出さず、必要な学力を学校できちんと身につけさせてやろう」ということであり、両氏が口にした「留年」という言葉とそのマイナス・イメージをことさらに強調して、マスコミが保護者の不安を不必要に煽ろうとしているだけのことのようだ。

マスコミの「言葉狩り」「あげ足取り」の報道姿勢に右往左往しないよう、国民も冷静さや知恵を身につける必要がありそうだ。〈宮〉

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