米中両政府は、中国の習近平国家主席が6月7、8日にアメリカを訪問し、カリフォルニア州でオバマ米大統領と会談と発表することが決まったと発表した。異例づくめの今回の習氏の訪米決定は、アメリカと中国の蜜月関係を匂わせるものである。

異例な点の一つ目は、習氏の国家主席就任後、3カ月という早さでの訪米となることだ。前任者の胡錦濤氏の場合、初めての訪米は就任後2年半が経ってからだった。早期に米中首脳会談が設定されたのは、日本が東南アジア・トルコ・モンゴルなどとの交流強化で中国包囲網を築いていることに対して、アメリカを取り込んで友好関係を固めようとする中国の意図があるのかもしれない。

もう一つは、ワシントンではなく、カリフォルニア州の保養施設で会談するという点だ。オバマ大統領が、習氏と個人的に信頼関係を築こうと歩み寄っていると見られている。また、習氏も国家主席就任後の電話会談で、オバマ氏に対して、「新しいタイプの大国関係」を築きたいと呼びかけており、さながら"相思相愛"の様子を見せている。

ケリー国務長官が4月の訪中で、北朝鮮に圧力をかけるよう協力を要請するなど、アメリカは外交問題で中国頼みの動きを見せている。その背景には、オバマ大統領が、福祉政策や財政問題など、国内問題に集中したいために、外交や国際紛争から手を引こうとし、「世界の警察官」の役割から退こうとしていることがある。しかし、このままアメリカの不介入主義が進み、万が一にも「太平洋を共同管理しよう」という名目で米中同盟を結ばれてしまえば、日本を含む西太平洋は中国に飲み込まれてしまうことになる。

しかし、中国共産党政府は一党独裁体制であり、現実に国民の自由を奪っているという事実を忘れてはならない。折しも、アメリカ国務省は21日に「信教の自由」に関する2012年度版の報告書を発表した。報告書は、中国のチベット、新疆ウイグル両自治区での宗教弾圧を問題視し、「信教の自由を尊重する姿勢が後退した」と中国政府を批判している。このように人権問題を批判する一方で、国際問題に関わりたくないがゆえに中国との歩み寄りを進めていることは、アメリカの外交姿勢のブレを感じさせる。

利害関係で米中が手を組み、信教の自由がない独裁国家の覇権奪取を許せば、世界の秩序は一気に混乱するだろう。これまで、「正義」を実現するために行動してきたアメリカは、中国の人権弾圧、自由の抑圧を助長することがないよう、外交の原則を立て直すべきである。(晴)

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