衆議院で12日、消費増税を8%に上げる2014年4月以降の「消費税還元セール」などを禁止する「消費増税転嫁法案」の審議が始まった。13日付各紙が報じた。

消費税は普通、工場などのメーカーから卸売業者、さらにスーパーなどの小売業者、最後に消費者へと商品が売られる際、そのつど消費税率を上乗せされる。今回の法案は、小売業者が「消費税還元セール」として価格に増税分を上乗せしない場合、その分を値下げするよう卸売業者などに強要することを禁止するものだ。

仕入れの価格交渉などにまで規制をかけるこの法案に、大手小売業から反発の声が相次いでいる。リンガーハットの米浜和英会長兼社長は、「消費税も吸収していかないと客数が減る」と言い、ダイエーの桑原道夫社長は「価格の決め方は自由競争であるべきだ」と批判している。小売業者のみならず、「還元セール」の恩恵を受けられない消費者も不満に思うのではないか。

ノーベル経済学賞を受賞した20世紀の経済学者F.A.ハイエクは著書『隷属への道』で、次のように述べている。「生産と価格に対する統制によって得られる権力は、ほとんど無制限のものである。(中略)統制経済において、当局は、われわれが何を消費するかを統制することになり、つまりはほとんど、われわれに所得をどう使うべきか命令しているのと変わらないことになってしまうのである」

渡部昇一氏も著書『自由をいかに守るか ハイエクを読み直す』でこの点を強調している。要するに、政府が小売業のセール価格を統制するのは、消費者の消費行動に口を出すことに等しく、自由主義経済にはあるまじきことなのだ。

たかだか3%の増税に対し、大げさな引用と思うかもしれない。しかし、この法案のような規制がなければ、消費者には「価値は変わらず価格が上がった商品」と「価値も価格も変わらない商品」のどちらかを選ぶ自由がある。その「還元」分がどこで吸収されるかは消費者には関係のないことで、イオンの岡田元也社長も指摘する通り、中小企業にしわ寄せがありすぎるなら「下請法」などの現行法で対応すべきだろう。

中小企業を本当に助けたいなら、アベノミクスで回復傾向にある日本の景気をしぼませかねない消費増税そのものをやめる方が早い。(居)

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