日銀の次期総裁・副総裁の人事案が15日、国会の同意を得た。これにより、黒田東彦・アジア開発銀行総裁が次期日銀総裁に、岩田規久男・学習院大学教授と中曽宏・日銀理事が同副総裁に正式決定した。金融緩和を主張してきたリフレ派の黒田氏と岩田氏が日銀トップに就任することで、量的緩和に消極的だった日銀の政策転換が期待されている。

今後日銀が行うと予想されているのが、長期国債の購入を通じた大規模な金融緩和だ。

これまで日銀が購入していた国債は、償還期間(返済期間)が1年~3年のものに限られていたが、今後は5年以上の国債も買えるようにする見通し。また、日銀は出回っている紙幣の量以上の国債を抱えないという「銀行券ルール」も自主的に定めていたが、これも見直す予定だ。また、日銀は2014年から、毎月のペースを決めて目標達成まで市場への資金供給を行う「無期限の緩和」を行うと決めているが、次期総裁の下で、これを前倒しで実施すると予想されている。

これまでも日銀は市場への資金供給を行ってきたが、それは主に金利を引き下げ、企業や個人がお金を借りやすくすることが目的だった。これに対し、新しい日銀体制は、市場に出回るお金の量を増やし、物価を上げることを目的に金融緩和を行う方針だ。企業や消費者は物価が上がる前に物を買うと期待されるため、設備投資や消費が先行し、景気回復につながるというのがリフレ派の狙いだ。

景気回復への期待感から、日経平均株価は15日、年初来最高値を記録した。株高の流れを受けて、トヨタ自動車やニトリなど、多くの企業が賃上げを決めている。物価上昇を警戒する声もあるが、経済が成長し、物価以上に賃金が上がれば、国民はかえって豊かになる。

政権交代後、安倍首相の主導する経済政策に市場が湧き、一気に円安・株高が進んだことで、これを見た野党は政府の日銀人事案を受け入れるしかなかった。人事案がスムーズに国会の承認を得た背景には、4年間の民主党政権下で、日本経済が停滞したことへの反省も感じられる。今こそ日銀は、しっかりと金融緩和を実行に移し、長期不況を脱却すべきである。(晴)

【関連記事】

2012年12月10日付本欄 自民・安倍総裁の経済政策「アベノミクス」のネタ元は幸福実現党?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5268

2013年3月11日付本欄 【経済コラム】賃上げこそ景気回復の第一歩 経営者の英断が日本を救う

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5723