政府と日銀は22日、2%のインフレ(物価上昇率)目標などを明記した共同声明を発表。デフレ脱却に向けて連携していく姿勢を示した。日銀が具体的な物価目標を設定するのは初めてで、金融緩和という大きな方向性は歓迎したい。だが一方で、大胆な緩和に踏み出したとまでは言えないという指摘もあり、手放しで喜ぶ前に、今後の日銀の動向を見極める必要がある。

声明の発表に先立って開かれた、日銀の金融政策決定会合では、「2%の導入」のほか、「2014年から期限を定めずに、毎月一定額の金融資産の買い入れを行うこと」「買い入れ対象は毎月、長期国債2兆円を含む13兆円程度」とすることなどを決めた。

その後の共同声明では、「デフレ脱却に向けた政府と日銀の連携強化」をはじめ、「日銀はインフレ目標2%を設け、できるだけ早期の実現を目指す」「政府は、日本経済の競争・成長力強化に取り組む」などの点が盛り込まれた。

共同声明を受け、安倍晋三首相は「画期的な文書だ」、甘利明・経済財政・再生相は「歴史的だ」と喜んだが、一方で、当面は大胆な金融緩和策が回避されたという見方も広がっている。

23日付日経新聞は、「実際の緩和規模をみると、現状とあまり大きく変わらないのが実態だ。(中略)国債などの金融資産には『満期』がある。放っておけば日銀の手元に積み上げた記入資産の残高は減ってしまう」などと指摘。

22日付のロイター(日本語版)でも識者のコラムで、「表面上はかなり極端な緩和に走ったかに見えるが、市場の一部で取りざたされていた2%の目標達成まで、毎月一定の国債を購入する『無制限緩和』と比較すると、かなり常識的な内容であることがわかる」として、「結果として、日銀の粘り勝ちとも言える」としている。

確かに、現時点で、安倍政権は「金融緩和をします」と宣言してきたに過ぎず、何か具体的な政策を実行したわけではない。日経平均株価も頭打ちになっており、政府・日銀が本当に実行に移すか否かというステージに入ったと言える。

大胆な金融緩和が行われるのは、次の新しい日銀総裁が就任する4月以降になるという見方も出ているが、今後、政府・日銀の本気度が試される。(格)

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