中国の週刊紙、南方週末の社説を中国共産党の指示で改ざんされた問題をNHKの海外放送が中国で10日夜に放送したところ、ニュース番組が一時中断された。

記事の改ざん問題を放映し始めた途端に画面が真っ黒になり、音声も消されたという。

11日と12日も同様に、この問題を報じたところ、映像と音声がそれぞれ中断された。放送中断は3日連続となる。中国当局は「外部の人間があおっていることも原因の一つ」と主張しているというが、責任転嫁も甚だしい。

中国では憲法35条で「言論、出版、集会、結社、デモの自由」が認められながら、実態としては当局による統制が行われていることが、改めて明らかになった形だ。

13日付産経新聞によると、南方週末の本社前で12日に抗議デモを行うべくネットで呼びかけられた時も、警官約1000人による監視体制がとられ、デモの発生を抑え込んでいる。

また、同日付朝日新聞は、南方週末と当局とのやり取りを詳しく報じているが、編集部と合意したあとも、さらに作り替えを指示したことを明らかにしている。

中国では共産党中央宣伝部が各メディアのトップ人事を掌握し、党の方針に反する報道をすると、責任者を更迭したり、停刊・発禁などの処分を下すことができる。さらに、国内のウェブサイトを検閲するネット警察が5万人以上いると言われる(本誌08年4月号)。

中国では習近平体制に入ってメディア統制を強化している。4日には宣伝担当の序列5位の劉雲山政治局常務委員が「メディアは党と政府の主張をしっかり広めよ」と要求した。

こうした当局の締め付けに対し、言論の自由を求めるメディアには反発の動きが広がっている。特に広東省では、言論の自由が保障されている香港メディアの影響を受けやすく、また、天安門事件の時に学生だった世代が編集幹部に多いと言われる。

11日には河南省の日刊紙「東方今報」が1面で、「南方週末」の題字とともに「われわれは共にある」との見出しを掲げて、支持を表明した。党中央への反発が思わぬ波紋を広げている形だ。

次第に広がりをみせる言論の自由をめぐる戦いは、中国の内部崩壊をもたらすのか、あるいは天安門事件の悲劇を繰り返すことになるのか。言論の自由が保障された模範的文明国家としての範を示すべく、NHKをはじめとする日本のメディアは中国当局の対応についてきっちりと批判すべきだろう。(村)

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2012年1月5日付本欄 習近平体制で「言論の自由」封殺 民主化求める社説書き換え

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2008年4月号記事 中国「13億人」の未来 第3回 メディアとネット「言論の自由」はどこにある?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=515