安倍晋三首相は、「村山談話」に代わる未来志向の「安倍談話」の策定を検討するなど、中国や韓国との歴史問題の決着を急いでいる。こうした動きに中韓のメディアは過敏に反応しているが、安倍氏の歴史観を執拗に攻撃するメディアが欧米にもある。米ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)だ。

3日の社説では安倍氏に「右翼の国家主義者(right-wing nationalist)」というレッテルを貼り、歴史見直しの動きが韓国や中国、フィリピンなどを刺激すると批判。「安倍氏の恥ずべき衝動は、北朝鮮の核開発などの問題での、地域で不可欠な協調を脅かす」と論じている。

自民党大勝後の12月20日の社説は、安倍氏に対中融和路線を取ることを促し、「日本の有権者は、国家主義的な妄想ではなく、経済の復興に投票したのだ」と論じた。安倍氏が慰安婦問題を「恥知らずにも否定している(shamelessly denies)」というくだりなど、端々の辛辣な言葉づかいは安倍氏を執拗に攻撃しようという悪意に満ちているように読める。

こうしたNYTの論調は、歴史的事実を見極めようという冷静さを欠いている。そもそも日本軍の相手をした慰安婦は、民間業者が募集した娼婦であり、高額の給与をもらって戦地で「勤務」していた。業者の中には女性を騙して徴用する悪辣なものもあったが、日本政府はこうした業者の取り締まりを行っている。日本軍が女性を慰安婦として組織的に強制連行した事実はないのだ。韓国で名乗りを挙げている「自称元慰安婦」の証言も、「家が貧しくて売りに出された」というケースばかりで、日本軍が強制連行したと証明できるものはない。

慰安婦問題は1983年、元軍人である吉田清治氏が、戦時中に韓国の済州島で女性を慰安婦として強制連行したと告白する本を出版し、これを朝日新聞が大々的に報道して火が付いた。これを韓国が日本に対する外交カードとして利用し始め、「謝れば済む」と勘違いした日本政府は「宮沢談話」に代表される謝罪外交を行い、火に油を注ぐ結果を招いた。

しかし韓国紙の調査の結果、この本が全くのでっち上げだったことは明らかになっており、吉田氏自身も嘘だったと認めている。日韓国交正常化の協議の際にも持ち出されなかった慰安婦問題は、後代の創作であり、それが嘘だと明らかにされている以上、この問題で騒ぐ理由はないのだ。

こうした史実に目を向けずに、「日本は人権を蹂躙する独裁国家だった」という一方的な先入観で報道を行い、韓国などのプロパガンダを復唱するNYTは、メディアとしての倫理を「恥知らずにも」踏み外していると言わざるをえない。安倍氏を執拗に批判するくらいなら、米国内で「慰安婦像」を次々と建てている韓国系団体の異常な行動をたしなめるべきである。

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2012年12月号記事 ふとどき国家の叱り方! - サムライの国よ、目覚めよ

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