衆院解散以来、株価の上昇が続いている。日経平均は19日、2カ月ぶりに9200円の高値をつけた。背景にあるのは、景気回復策を怠ってきた民主党政権の退場と、金融緩和で積極的にデフレを退治しようとする自民党・安倍晋三総裁への期待感だろう。

安倍自民党の政策の目玉は、日銀法改正と、国債の日銀引き受けである。自民党は日銀法改正で、政府と日銀の連携を強化し、より効果的に景気調整をできるようにするという。また、公共事業で積極的な景気浮揚を図るために、その財源となる国債を発行する。

20年来のデフレ不況に苦しむ日本経済の現状からして、安倍氏の打ち出した積極的な金融政策は至極真っ当だ。金融危機後に欧米の中央銀行が積極的な金融緩和でデフレを防ごうとした一方、日銀の白川方明総裁は必要な量的緩和策を取らずにデフレを悪化させた。本来なら政府と日銀は景気調整の目標で一致すべきだが、日銀は日銀法を根拠にした「独立性」を盾に抵抗している。安倍氏の主張は、「何もしない政策」で賃金や雇用の減少を招き、国民生活を破壊している無策の日銀への強烈なプレッシャーになるだろう。

大胆な金融緩和は幸福実現党が2009年から訴えてきたもので、安倍自民党が歩調を合わせた格好だ。長引くデフレによる景気停滞を受けて、この問題が選挙の争点に浮上してきた。

一方で、「制御不能のインフレを招く」というおかしな批判も出ている。20日付の朝日新聞は一面で、戦前の政府が戦費調達のために行った国債の日銀引き受けで、「市中にばらまかれた紙幣は終戦後、『紙くず』となり、物価は戦中の90倍に上昇。国民生活を壊した」と紹介し、"脅し"をかけた。

デフレが国民生活を破壊しているこの時に、インフレの恐怖を煽ってデフレ対策を否定するなら、それはおかしな話だ。

また野田佳彦首相は自民党の政策を、公共事業のバラマキで財政規律を守らなくなると批判しているが、これもお門違いだ。過去最大規模の予算を組んで、経済効果を生まない子ども手当などのバラマキを行い、財政規律を無視したのは民主党政権である。民間の需要が冷え込んでいる時はむしろ、政府が積極的に公共投資などを行って景気浮揚を図るべきであり、安倍氏の政策は評価できるものだ。

安倍氏発言による株価上昇を朝日新聞は「安倍バブル」と揶揄しているが、必要な金融政策に「バブル」というレッテルを貼って潰し、長期不況をさらに長引かせるような愚を犯してはならない。

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