17日付朝日新聞の社説が、総選挙を前に、「『熱狂の政治』はいらない」というタイトルで、最近の選挙を嘆いている。だが、2009年の衆院選で、朝日を中心としたマスコミ自身が「政権交代」と熱狂して、民主党政権を誕生させたことをすっかり忘れているかのようだ。

社説は冒頭で、「振り返れば、このところ異様な総選挙が続いた」と切り出し、以下のように続く。

「09年は『政権選択選挙』。民主党が地滑り的な勝利を収め、政権交代を果たした。(中略)政権交代は是か非か。シンプルな争点を政治が掲げ、多くの有権者の熱い期待を集めた。だがそんな『熱狂の政治』は、果たして人々の期待に応えることができただろうか。答えが否であることは、1年限りの首相交代を5度も繰り返してきた現状が、何よりも雄弁に物語っている」

これでは、まるで政治家や有権者が勝手に熱狂して、勝手に迷走したかのような主張だ。マスコミ自身に、その責任がないとは言わせない。09年当時の朝日新聞の社説を振り返ってみよう。

公示日の8月18日付の社説。「政権を担える党が事実上自民党しかなかった55年体制に終止符を打つ。そんな『2009年体制』の幕を、今度の総選挙で切って落とすことができるかどうか」(一部抜粋)。どう読んでも、自民党政権が倒れることを願う内容だ。

さらに、投票日前日の8月29日付の社説。「あしたは投票日です。民主党が優勢で『政権交代』が実現しそうです。長く続いた自民党支配の政治を変えたい、という有権者の思いが、風を起こしているようです」(一部抜粋)。ここまで来ると、もはや「民主党の機関紙」である。

もちろん、当時、民主党に追い風を吹かせたマスコミは朝日新聞だけではなかった。新聞各紙は「政権選択」という言葉よりも、「政権交代」という言葉を多用して有権者を誘導した(下記の関連記事、2011年8月号本誌記事の中で検証済み)。それがミスリードであったことは、冒頭の17日付朝日の社説自身が“告白"している。

また、同日付の朝日社説は、「各党は可能な限り、有権者に開かれた議論のなかで、未来に責任をもてるマニフェストを示すべきだ」と締めくくる。だが、09年衆院選で、300を超える小選挙区に候補者を立てて戦った幸福実現党を意図的に報道しなかった責任については一行もふれていない。

さらに、同社説では、「国の根幹にかかわる3つの基本政策について明確な方針を盛り込んでほしい」として、「外交・安全保障」を掲げているが、09年の衆院選を「国難選挙」と位置付け、どの政党も主張することを逃げた「外交・安全保障」を争点にして、正々堂々と戦った幸福実現党について見て見ぬふりをした新聞はどこか。

皮肉を言うようで心苦しいが、「マスコミ(朝日新聞)は可能な限り、有権者に開かれた議論のなかで、未来に責任をもてる報道を行うべきだ」。(格/居)

【関連記事】

2011年8月号記事 民主党政権をつくったマスコミの責任を問う 「国難」は09年衆院選の報道から始まった

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=2270

2011年12月18日付本欄 マスコミはまた同じ愚行を繰り返すのか

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3514