野田政権は14日、「2030年代に原発ゼロ」の方針を打ち出した。その中で、次世代の原発である高速増殖炉の実用化も断念したが、高速増殖炉は「夢の原発」と言われるように、国民や国家を守る上で非常に重要なものである。

高速増殖炉の実用化断念により、事実上、実証炉「もんじゅ」の実用化に向けた取り組みは止まる。福井県敦賀市にある「もんじゅ」は、機器の一部が落下するトラブルで2010年に停止。2012年に再稼動する予定だったが現在も止まったままだった。

この高速増殖炉のすごさは「増殖」という名前がついているように、発電しながら消費した分以上の燃料となるプルトニウム239が増やせるところだ。そのため、原理的には、一度、元の燃料であるウラン資源を輸入すれば半永久的に発電できる。つまり、燃料を輸入に依存しなくなるということであり、日々、石油などの輸入が必要な火力発電とは異なり、日本の電力事情が世界情勢に左右されないことを意味する。

また、プルトニウム239は核兵器に転用が可能なため、「その気になれば核兵器をいつでも作れるぞ」という状態は、中国や北朝鮮などに対する抑止力の役割を果たす。防衛費をかけずに国防力を高められる、その意味でも「夢の原発」だ。

高速増殖炉は、資源が少なく、かつ技術力の高い日本に最もふさわしい発電施設と言っていいのだ。

民主党政権は、政権交代後に、「コンクリートから人へ」という耳に心地よい言葉を使い、八ッ場ダムや川野辺ダムなど全国140以上のダム建設を中止。八ッ場ダムでは、それまで投資した約2500億円の税金がドブに捨てられた格好となったが、その後の東日本震災で、コンクリートが人の命を守ることが実証された。

「もんじゅ」には、これまでに約1兆円が投じられているが、この発電施設の実用化は、電力のみならず、人の命や国家をも守ることにつながる。野田政権は高速増殖炉の実用化断念を、早急に撤回すべきである。(居)

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