政府が4日に開いたエネルギー・環境会議は、2030年に原発ゼロを目指す際の課題を検討した。議論の中では、急激な脱原発が日本経済と家計に与える多大なる悪影響が明らかになった。

以下はその一部(参考:国家戦略室 エネルギー・環境会議 第13回資料)。

  • 電気代を含む家庭の光熱費は月額最大3万2243円となり、現在の約2倍になる。
  • 原発を縮小することで、液化天然ガスや原油への依存度が高くなる。調達の際の国際交渉力が低下し、価格交渉も不利になる。
  • 原油輸入の中東依存度が高い中、ホルムズ海峡が封鎖された場合、安定的なエネルギー・電力供給に支障が生じる恐れがある。
  • 原子力安全を支える技術と人材の喪失や、外交・安全保障への影響など「不可逆的な影響」が出る。

不況が続く中、消費税増税が決定し、家計への負担は増える一方である。その中で原発ゼロを実現したなら、可処分所得はさらに減る。天然ガスや原油価格が上昇すれば、電力だけでなくガスや灯油の燃料費増も考えられる。北海道や東北などの寒冷地では、もともと家計に占める燃料費の割合が高い分、さらに負担が大きくなるだろう。

東京電力は、9月1日から家庭用の電気料金を約8%も値上げした。企業向けの電気料金は既に4月から上がっており、現在は4月以前に比べて約14%増。デフレ経済下の不況にあって、電気料金の値上げを製品へ価格転嫁できない企業が多い。消費税増税と電気料金値上げで、家計にとっても企業にとってもダブルパンチである。

5日付日経新聞によれば、もし大飯原発を再稼働しなかった場合、国内電力の供給予備率が2.2%となり、安定供給に必要な水準である3%を割り込んでいたことが分かった。電力供給が不安定になれば、場合によっては計画停電が実施され、社会や経済、医療機関などに甚大な影響が出るところだった。

そもそも福島原発の事故については、「原発そのものが悪い」のではなく「震災の規模を甘く見て、津波対策ができていなかった」のが問題だった。このまま空気に流されて原発ゼロを実現すれば、家計は苦しくなり、社員のリストラが進み、ついには企業がバタバタと潰れ、国民生活を締め上げることになる。

消費税増税にも言えることだが、政治判断をする際には、原因と結果を正しく見通すことが大切だ。「国民の安全を守る」という名目で「国民の生活を破壊する」結果をもたらすことは許しがたい。再稼働可能な原発は、再稼働を進めていくべきである。(晴)

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