北朝鮮はこの頃、経済改革の兆候を見せるとともに、中国依存を強めている。今月半ばには張成沢国防副委員長が北京を訪問し、10億ドル以上ともされる借款を要請したと見られる。北朝鮮は、中国と経済特区の共同開発を目指し、経済のテコ入れを図りたい思惑があるものと見られる。

軍事開発に予算を割くあまり、中国などからの援助に頼り切っている北朝鮮経済だが、これを自力で立て直す道が実はある。北朝鮮の地下には、電子機器の生産に不可欠のレア・アースを含む200種類にも及ぶ鉱物が眠っており、その価値は6兆ドル分とも言われる。

採掘技術を持った外資による投資を呼び込めば、北朝鮮経済は資源をテコに再建できる可能性がある。とはいえ、問題は高すぎるカントリーリスクである。鉱物の採掘プロジェクトには長い時間がかかるが、北朝鮮政府がその間に安定した投資政策を採り続ける保証はない。また、北朝鮮側が鉱山への投資家の立ち入りを実質的に制限するという透明性の問題や、インフラ整備の課題などを抱えている。

米シンクタンクの専門家などが寄稿する外交専門オンラインメディア「ザ・ディプロマット」は30日付で、「北朝鮮が統治の問題を克服しない限り、鉱業に海外からの投資が流れこむ可能性は少ない。加えて、経済を改革しない限り、こうした採掘プロジェクトの利益が北朝鮮の国民に届き、国家の発展のために使われることはなさそうだ」と論じている。

北が鉱山開発で得る利益が、ミサイル開発を含めた軍事費に使われ、周辺国の安全保障を脅かすということであれば、投資を呼び込もうとしても難しい。また投資で北朝鮮を潤せば軍部の専横に手を貸すことになるとすれば、投資する企業も道義的な責任を感じざるを得ないだろう。やはり北朝鮮の現体制が崩壊し、民主化が実現してからでなければ、健全な北朝鮮経済の発展は困難なのである。

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