驚くばかりの自己中心的な論法である。3日付読売新聞の社説は「文化と民主主義を守るために」と題して、今回の消費税率引き上げの際に、新聞や書籍に対して軽減税率を導入すべきだ、と論じている。

同紙の社説の主旨は以下の通り。

  • 欧州諸国の付加価値税(消費税)は税率が20%前後と高いが、新聞に適用される税率はドイツ7%、フランス2.1%、イギリス0%などに軽減されている。
  • 新聞が民主主義を担う「公器」として認識されているからだ。日本でも新聞の公共性に着目するべきだ。
  • 社会保障制度を維持するためには、将来で一気に消費税率を10%超に引き上げる追加増税も必要。
  • 家計の負担率をやわらげ、国民の理解を得るためにも、軽減税率が効果的だ。

読売は、野田政権・財務省の増税路線を全面的にバックアップし「社会保障の維持のためには消費税増税をしろ」と大キャンペーンを展開し、国民には身を切れと迫る一方で、「自分たちには増税するな」と言っているのだ。それを堂々と社説として載せる神経には呆れるしかない。

一方、先日のNHKで注目すべきニュースがあった。今年3月までの1年間で国に納められず滞納された税金の額は6073億円、そのうち消費税が3220億円と53%を占め、過去最高の割合となった。経営の苦しい業者が消費税分を運転資金に回すなどして、滞納するケースが増えたためだという。

野田首相も、読売など増税派のマスコミも、「増税は消費税でやるのが一番公平だ」と言っているが、これだけ滞納が多ければ公平とは言えまい。消費税増税をすれば小売店をさらに直撃し、滞納がもっと増えるのは必至だ。

業界不況に悩む新聞が増税を謳うのは、「みんなで不況になれば怖くない」と足を引っ張り合って、みんなを貧乏にしようとしているように見える。そんな貧乏神に憑かれた新聞が言うことと逆の方向こそ、本来目指すべき繁栄の方向である。

新聞を「公器」と認識するのは新聞社側ではなく、読者の側だろう。軽減税率などと言っているうちに、読者から見向きもされなくなるのは時間の問題だ。(仁)

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