大津市立中学2年の男子生徒が昨年10月に自殺した事件で、自殺にいたるまでの学校側の対応がある程度明らかになってきた。以下、時系列的で整理すると――

  • 7月ごろ 男子生徒が郵便貯金からお金を引き出し、約40万円を同級生に渡していた模様。
  • 9月29日 体育祭で同級生3人が男子生徒を縛るなど暴行。多くの生徒が目撃、通報。
  • 10月5日 男子生徒が同級生とトイレで「ケンカ」。女子生徒が通報。担任らで対応協議。
  • 10月8日 男子生徒の自宅自室を同級生が荒らす。
  • 10月9日 家族に「登校したくない」と相談。
  • 10月11日 男子生徒が自宅マンションから飛び降り自殺。
  • (その後の生徒へのアンケートに、「殴る蹴る」「ハチを食べさせる」「自殺の練習と言って首を絞める」「葬式ごっこ」などが記されていた)

この中学校長は14日の記者会見で、「(男子生徒と同級生に)確認したら、双方が手を出したケンカということだった。その段階で、いじめだという確実な認識はなかった」「気づかなかった」などと述べた。

別の生徒からいじめの通報があった際、担任教師らが対応をしてはいる。しかしとった行動は、男子生徒に問いただして「大丈夫」と言われたからと対処を終わったという。

ただ、自殺後の他の生徒の証言には「先生が見て見ぬふりをした」というものがあり、積極的に「隠蔽」した可能性がある。

この事件でもそうだが、いじめには傷害や恐喝、器物損壊など明らかな犯罪が含まれている。未成年とはいえ、「犯罪者」であり、これらの犯罪を止めるには警察に類するような強い力が要る。

しかし、その労力を惜しむ教師や校長がいれば、これらのいじめ犯罪を「隠蔽」することになる。このときに使う手法は例えば、(ア)加害者の主張を採用する。(イ)被害者と加害者を「話し合い」させ、両成敗にしてしまう。(ウ)被害者に落ち度があったと叱る――などだ。

大津いじめ事件でも、これらの手法が用いられ、「隠蔽」された可能性は極めて高い。

本誌は2006年末ごろから、いじめ解決の方法を様々な形で提言してきた。それを以下にまとめてみた。こうしたプロセスをたどれば、大津いじめ事件は解決できた。

  • 学校側に「いじめは許さない」という強い決意が必要。早期発見、早期解決が不可欠で、校長、担任の責任として徹夜してでも解決しなければならない。
  • 学校側は、いじめ被害の訴えがあれば、被害者に「絶対に解決する」と伝え、被害の具体的内容を話させ、加害者の名前もすべて挙げさせる。
  • 加害者グループ全員を一斉に呼び出し、口裏を合わさせないため、それぞれ別室に入れ、被害の項目が事実かどうかを確認する。1人2人と事実を認めはじめるので、まだ認めない加害者には「他の者は認めた」と伝えることもある。家に帰すと口裏合わせをされるので、授業を潰してでも夜になっても続ける。
  • いじめを解決するには、教師が加害者を正しく叱る必要がある。その際に以下を理解させる。(1)いじめは「悪い」ことだと教える。(2)被害者の辛さを理解させる。(3)二度といじめをしないと約束させる。(4)その上で「悪いことをした。謝りたい」と思わせる。
  • 被害者とその保護者の前で、加害者とその保護者に謝罪をさせる。この結果、被害者は安心して学校に通うことができる。

また、被害者の保護者が学校側にいじめ解決を求める場合は、以下のプロセスを踏むのが基本だ。

  • 子供本人や他の生徒から証言を集めるなどして加害者を特定し、いじめの事実を記録。
  • 破られた教科書などの物証を押さえる。
  • これらを文書化し、学校に要望書として伝える。加害者の謝罪、担任の変更、クラス替えなど要望項目を明確に。学校との交渉ではやり取りを録音する。
  • 学校が十分対応しない場合は、教育委員会に相談する。それでも難しい場合は警察、法務局、政治家、マスコミに相談する。

大津いじめ事件は、ことごとくいじめ解決のプロセスの正反対のことが行われた。このような犠牲者を出さないために、公立学校に「善悪」の観念を復活させ、いじめを「隠蔽」する教師、校長を根絶していかなければならない。(織)

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2012年4月号記事 【第4回】いじめは必ず解決できる 事実を明確にし、文書化して交渉する

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