WHO(世界保健機構)がこのほど、東京電力福島第一原発事故による被曝線量の推計結果を公表したが、日本の推計値より高い数値を出している。最大の値となった浪江町での全身被曝は、4ヵ月で10~50ミリシーベルトと推計。日本政府は「現実より明らかに高い数値」と反論しているが、WHO推計をもとに見たとしても、健康被害はあり得ないのは明らかだ。

WHOが今回の推計で用いた見積もり条件は以下の通り。

  • 日本政府が昨年9月までに公表した、土壌や大気、食品などに含まれる放射性物質の濃度に関するデータを用いた。
  • 浪江町など原発から20~30km圏の住民が4ヵ月間留まったとして試算。だが、実際にはその大半が1ヵ月で避難している。
  • 外部被曝は1日8時間屋外にいたとして計算した。
  • 呼気での内部被曝は1日中屋外にいたと仮定した。
  • 食べ物はすべて福島県産で、出荷が規制された汚染食品も一部流通したと仮定した。

これを見れば、WHOが、現実に住民が置かれている実態から離れた仮定で推計していることが分かる。

実際は、住民の測定結果は次の通りだ。

福島県が測定した結果、今年の3月末時点で、調査を受けた約3万2千人のうちの99%以上が内部被曝で1ミリシーベルト未満(放射性セシウムのみ)だった。行動記録から推計した外部被曝は、対象の約1万人のうち6割近くが1ミリシーベルト未満で、71人が10ミリシーベルトより高かった。最大で23ミリシーベルトという。

なぜWHOはこんな高い推計値を出したのか。WHOは「予防原則」の立場をとっており、「線量の推計が、いかなることがあっても実態より低く出ることがないようにした」という。つまり「最大に大きく見積もった数字」だということだ。

だが4ヵ月で最大50ミリシーベルトと言っても、月ごとに放射線量は低下していくため、1年に換算すると100ミリシーベルト未満になる。最大に見積もっても、がんのリスクが高まる100ミリシーベルト未満なのだから、政府もWHOに反論するだけでなく「帰宅可能」と言うべきだろう。 (居)

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