2003年から続いてきたイランの核開発をめぐる欧米との対立が、緊迫した情勢となっている。

13日には、イランの高速小型艇が6日、アメリカ軍艦艇に対し約500メートルまで急接近し、威嚇していたことが明らかになった。偶発的に軍事衝突が起きる可能性も出ている。

今回のイラン危機は、国際原子力機関(IAEA)が昨年11月、イランの核兵器保有に近づいたことを示唆する報告書を公表したのが発端。欧米がイランからの原油禁輸の追加制裁を決めたのに対し、イランはホルムズ海峡封鎖の可能性に再三言及、北朝鮮顔負けの「瀬戸際外交」を展開している。

アメリカやイスラエル国内には、武力制裁の議論も出ているが、両国軍が動くとしたら二つのタイミングがある。

短期的には、イランが本当にホルムズ海峡を封鎖した場合。幅34キロの海峡を世界の海上輸送の石油の35%以上が通過しており、日本にいたっては中東からのタンカーの約8割が通過する。

イランの海上封鎖に対してペルシャ湾に展開するアメリカ海軍第5艦隊が報復し、ステルス戦闘機による空爆もあり得る。ただ、イランにとっては、アメリカ軍と本格的に戦闘しても勝負にならないし、アメリカも財政難で軍事行動の余裕は現実にはない。金正日総書記が死去した北朝鮮情勢がまだ見えない問題もある。

結局、短期的には、外交的に落としどころを探ることになるだろう。

ただ、中長期的には、イランが本当に核兵器を保有するタイミングでの軍事行動は十分あり得る。イランは今年2月から濃縮ウランの本格製造を始める予定で、「1~2年で核兵器をつくることができる」と欧米の情報機関は見ている。

金正恩が権力を継承したばかりの北朝鮮はこの1年が極めて不安定で、内紛や内乱、暴発の可能性があるが、イラン情勢はこの1~2年が山場だ。

冷静に見れば、「できるだけ早い時期に北朝鮮を崩壊させ、その後にイランの核開発問題も決着する」という"タイムスケジュール"が常識的だ。

日本としては、イラン危機のために北朝鮮が放置される事態は避けたい。(織)

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http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=594