北朝鮮の金正日総書記死去によって、東アジアが1950年の朝鮮戦争時に並ぶような不安定な時代を迎えている。

今後考えられるシナリオを整理した。

【政権移行がうまくいく場合】

(1)1、2年かけて金正恩氏が権力を継承し、世襲を完了する。ただ、金正恩氏は国民的な尊敬も得られていないため、数カ月以内に、ミサイル発射などの軍事的挑発や核開発の加速によって朝鮮人民軍などの支持を取り付ける行動に出る。

(2)金一族、朝鮮人民軍首脳、朝鮮労働党エリートなどによる集団指導体制を確立する。ロイヤルファミリーである金正日氏の義弟、張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長が中心とみられるが、葬儀名簿では張氏の序列は19位で、後見体制はまだ不透明。

【政権移行で混乱する場合】

(3)経済開放派と保守強硬派との路線対立、権力闘争が起こる。張成沢氏は経済開放派とされ、軍部の金永春(キム・ヨンチュン)人民武力部長は保守強硬派の筆頭とされる。スイス留学経験のある金正恩氏は、やや開放派に近いとされ、この対立関係から、内紛・内乱・内戦へと発展し、核の管理が難しくなる。大量難民も発生。軍部による金正恩氏の追放や暗殺も考えられる。

(4)食糧難・生活難などによる国民の不満が高まり、大規模な暴動が発生。軍が武力鎮圧し、軍主導の体制を確立しようとする。

(3)、(4)の「政権移行で混乱した場合」、米軍は行動を起こす準備をしている。

金正日死去に伴う体制崩壊に備えて、米韓軍で08年にまとめた「作戦計画5029」が実行に移される可能性がある。

2011年2月の米韓合同軍事演習でも、金正日死去を想定した訓練が行われ、米韓軍が難民を救出すると同時に、大量破壊兵器を確保するというシナリオが含まれていたという。

米韓軍の軍事行動は、その後の韓国主導での北朝鮮の吸収・統一を前提にしたものだ。その統一計画についても、米韓両国政府内で具体的な検討が始まっているとされる。

米韓軍の出動、南北朝鮮の統一のプロセスで、日本も主体的な行動が求められる。朝鮮戦争以来の有事に日本は備えなければならない。(織)

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2009年9月号記事 政界三国志【霊言】日本は北朝鮮の属国になる

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=663