アメリカのオバマ政権がアフガニスタン戦争やイラク戦争を事実上終え、米軍をアジア・太平洋にシフトしようとしている。中国の軍拡に対する警戒がそうさせているわけだが、米中の国益が正面からぶつかっているのが南シナ海だ。

中国は南シナ海を台湾やチベットと並ぶ「核心的利益」と位置づける。アメリカは「航行の自由」を守るために軍事的な介入も辞さない構えを見せる。

アメリカが守ろうとしているのは、シーレーン(海上交通路)の安定の上に成り立つ経済的利益だけではない。アメリカの安全そのものを守ろうとしているのだという。

ある日本人の安全保障専門家によると、南シナ海は、中国がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載した原子力潜水艦が遊弋する最重要海域なのだという。「原潜を沈めておくのに東シナ海は浅く、日本の南西諸島もあるので、封じ込められやすい。その点、南シナ海は比較的深い海で、見つけられにくい。ここからアメリカ本土に届くICBMがアメリカに対する最大の武器になる」と指摘する。

南シナ海の海南島は中国の潜水艦基地があり、最新鋭の原子力潜水艦(晋級)が配備されている。この原潜は、アメリカに届く射程8千キロのSLBM(巨浪2)を10~12基搭載できるとされる。

「巨浪2」の開発は難航しているようだが、配備に備えて中国としては南シナ海の海洋権益をめぐって少しでも主導権を握っておく必要がある。

それに対して、アメリカは、中国が南シナ海からSLBMでアメリカ本土を狙うことができるようになったら、国民の生命が重大な危機にさらされることになる。

南シナ海を何としても守るというアメリカの断固たる姿勢は、中国の核の脅威を避けるためという意味合いもあり、アメリカにとって最重要の国益だということになる。(織)

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2011年11月23日付本欄 10年で80兆円規模の国防費削減 南シナ海への米軍関与にも打撃

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3330