中国の全国人民代表大会(全人代=国会)の常務委員会は29日、国民の身分証明書に指紋情報を加える「住民身分証法」改正案を可決した。

約13億4000万の全国民の指紋情報を収集することで、犯罪捜査のほか、民主化や民族独立を求める活動家への監視を強める。来年1月1日に施行予定で、1年以内に全国民の指紋登録を義務付けるという。

30日付読売新聞などによると、中国では全国国民が氏名、生年月日、戸籍地、顔写真などが記載された身分証を持っている。2004年からIC化が始まり、身分証に内蔵されているチップには、すでに指紋情報が入力可能な機能が埋め込まれている。ネット上では、「共産党は国民を犯罪者とみなしている」「法を守っている国民から指紋を集める必要はない」「いずれDNAも取られる」など、当局を批判する書き込みが殺到しているという。

こうした国家管理体制が、国民の同意などもなく、あっという間にできあがってしまうのが、独裁体制の恐ろしいところだ。

ただこれは対岸の火事ではない。日本でも民主党政権が、年金や医療、納税などの情報を一括した、国民全員に番号をつける「共通番号制度」の導入を検討中。順調に議論が進めば2015年1月にも導入される。

この制度のメリットは、事務処理のスピードアップやコスト削減だが、「国家が国民を管理しやすくなる」という目的においては、中国の指紋登録と同じである。導入されれば、国民一人ひとりの社会保障費や納税額のほか収入や預貯金などの詳細まで、国家に一元管理される危険性がある。

民主党が2015年まで政権の座についているとは思えないが、いつなんどき日本政府が「指紋も集めます」と言い出すか分からない。効率を求め過ぎて統制的になれば、国民の自由が狭まるという側面には、常に注意が必要だ。(格)