神奈川県の黒岩祐治知事が知事選の公約で掲げた「4年間で200万戸の太陽光パネル設置」の公約を「忘れてほしい」などと述べて、事実上撤回した。

黒岩知事は東日本大震災後の4月10日の統一地方選で太陽光発電の推進を訴えて当選。街頭演説ではソーラーパネルを持ち歩き、「太陽光で脱原発」を訴えていた。

神奈川県に現在設置されている太陽光パネルは、黒岩知事就任後から8月までに約8200戸分、累計で約4万8000戸分になった。今年度は昨年を上回るペースで設置が進んでいるが、目標の「200万戸」にはほど遠い。

9月に発表した「かながわスマートエネルギー構想」は、2020年度に県内の消費電力量の20%以上を、太陽光発電に風力などを含めた再生可能エネルギーでまかなう計画で、このうち太陽光発電分は「4年間で約55万戸」、既設を含めても59万戸とした。選挙公約時から「145万戸」も少ない公約の修正だ。同知事は今月7日の予算委員会で、新構想と公約との兼ね合いについて、「200万戸分は計画停電を起こさないために打ち出した数字で、精査したものではない」と釈明し、「(選挙中は)メッセージ性のために正確さよりもわかりやすさを考えた」という。

神奈川県の2009年度の消費電力量における再生可能エネルギーの割合は2~3%程度しかない。県議会は「修正はやむを得ず、現実的」と寛大に受け止めているが、県民からは「公約は有権者向けのまき餌に過ぎなかった」など非難が強まっている。

震災直後は感情に流され、「再生可能エネルギーによる脱原発」を主張しても、その後、それが非現実的であることを認識せざるを得なくなったということだろう。綺麗事に惑わされないよう、有権者も正しい情報を集めて賢くなる必要がある。(清)