韓国経済の雲行きが怪しい。金融監督院が市場対応態勢を上から2番目に危険な「警戒」の段階に引き上げたことを、9月30日付中央日報日本語版(web)などが報じている。

韓国銀行によると、韓国の通貨「ウォン」は、ここ2カ月で米ドルに対して12%もウォン安ドル高が進んだ。同銀に登録された世界主要21カ国通貨のうち、米ドルに対する値下がり率は世界最高水準で、ユーロは6.3%、英ポンドは5.2%と韓国ウォンの半分程度という。ちなみに、日本は2.2%値上がりしている。

こうした状況を受け、金融委員長の金錫東(キム・ソクドン)氏は29日、「明らかに平和な状況ではない。十分な政策的対応を始めるときになった」と語った。

日本人の目には、韓国はウォン安を受けて自動車や家電などの輸出が好調で海外投資を加速させているうらやましい状態に映るかもしれない。だが一方で、国内の設備投資が鈍り、若者の雇用が停滞し、物価上昇が続き、富が国内に還元されていないという問題を抱えている(参考:29日付日経新聞)。

ちなみに、このような問題が起きる一つの要因は、企業の寡占状態が過剰なためだろう。たとえば、現代自動車(ヒュンダイ)の国産自動車市場におけるシェアは、傘下の起亜自動車を含めると80%を超える。家電でも、大手企業はLGとサムスンの2社のみだ。

「寡占化した市場では、いくらでも商品の値段をつり上げられる。寡占企業が国内で多くの利益を出して、海外ではウォン安を利用して勝つ」「海外には、高級品を安売りして、国内に粗悪品を高く売りつけるのです。海外相手に損した分を自国の国民にしわ寄せして帳尻を合わせるというか、国全体の対外債務を累増させてきた」(『韓国経済の真実』室谷克美、三橋貴明/PHP研究所)

韓国内では、外貨準備高が減少する中で、公式にデフォルト(債務不履行)目前にあることを認めたとの観測もある。企業が公益性を軽視し、国内事情に目を配らないと足元から崩れていく危険性があるという教訓を示している。(藤)