今、アメリカの債券投資家の間で、日本に学ぶ動きが盛んになっているらしい。15日付のウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)で報じられている。

それによると、国債の格付けが最上級の「トリプルA」から転落し、ゼロ金利を継続している点が、アメリカは日本とよく似ているという。

アメリカ経済はいつの間にか、日本の後追いをしており、いわば「日本化」しつつあるというわけだ。

従って、アメリカの債券投資家の間で懸念されているのは、アメリカも日本のように「失われた10年」に突入するのではないかということだ。

悪いお手本になっているわけだが、実は、ゼロ金利にしても、量的緩和政策にしても、デフレ不況対策としては日本の独創だ。アメリカがその後追いをしているわけだから、困難な課題に対して、世界のトップランナーとしてその解決に取り組んでいることに、日本はある程度の自信と使命感を持ってもいい。

これまで世界ナンバーワンの先進国として君臨してきたアメリカが日本に追随するということは、「課題先進国」としての日本の面目躍如とも言える。

ただ、問題なのは、日本が独創で編み出したはずの一連の金融緩和策は、追随してきたアメリカの方がよりよくやっているように見えることだ。

日本は、実は独創性があるのに、その卓越性を自覚できず、ライバル国に研究され、追い越されて敗れ去るというパターンが多い。

先の大戦の真珠湾攻撃でも、空母を主体とした機動部隊で攻撃するという世界初の独創を示しながら、日本軍はその重要性に気づかず、最後まで従来の「大艦巨砲主義」を捨てることができなかった。しかし、米軍はいち早く航空機主体の発想に切り替え、最終的な勝利をものにしている。これだって、アメリカの「日本化」と言えなくもない。

「日本化」という言葉が、「日本のように失敗する」というネガティブな意味を持つか、それとも、「日本の課題解決策に追随する」というポジティブな意味を持つかは、日本が自らの卓越性を自覚できるか否かにかかっている。今、必要なのは、どのような厳しい事態を迎えようとも、未来を切り開くことはできるという信念だ。(村)