日本経済研究センターが14日にまとめた2020年度までの中期経済予測によると、定期検査に入った全国の原発が再稼動しなかった場合の経済損失は年間7.2兆円に及ぶことが明らかになった(15日付日経新聞)。

火力発電では電力不足を解消できず、化石燃料の輸入コストは急増、工場の稼働率は低下して、貿易収支は赤字に転落するとの見方を示した。

福島原発事故の発生直後には、マスコミを始め日本では原発停止の大合唱だったが、上記のような現実的な課題が明らかになってくるにつれ、原発停止に対する慎重論が目に見えて増えてきている。

原子力発電再開の是非を問うイタリアの国民投票では、約95%が反対票を投じ、スイス、ドイツに続いてイタリアも脱原発路線が明確になったが、同日付産経新聞は、「(イタリアは)不足分はフランスから原子力製の電力を買って使える。そこが、外国からは電力を融通してもらうことができない日本との決定的な差異である」「安全性を確立して(中略)、脱原発の流れを食い止めるのは、事故を起こした国として日本が国際社会に果たすべき責務であろう」との主張を掲載。

日銀の白川方明総裁も14日の記者会見で、原発停止による電力不足が長引けば「日本経済への影響は非常に大きくなる」、特に「製造業の生産コストや日本への投資」への影響が懸念されるとの警戒感を示した。さらに、経済同好会代表幹事の長谷川閑史氏も14日、「時間とコストを見極めない代替エネルギーは現実的ではない」と発言し、政府に対し原発の継続表明を求めた(同紙)。

やはり、「半永久的に利用可能なクリーンエネルギー」という原発のメリットを、感情論に押し切られて手放すべきではない。

菅首相は14日の震災特別委のなかで「私が辞めると言って原子力事故が収束するのなら、すぐにでも辞める」と発言したが、この時期に原発継続を表明し、原発立地県に運転同意を要請できない人物は、一日も早く首相の座から降りるべきだ。(雅)