米国のダービン上院議員は先週、反ムスリム的偏見に対する公聴会を開いた。これを受ける形で、5日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューンに米国の元カトリック司祭で小説家のジェイムズ・キャロルが、西洋の歴史そのものにイスラム教への軽蔑や嫌悪が深く根付いていることを論じている。以下、抜粋紹介。

・米法務省の統計によれば、ムスリムが米国人口に占める割合は1%なのに、宗教がらみの差別の14%がムスリム施設に関連している。これは米国のムスリムが著しく差別を受けている証拠だが、米国に浸透している反イスラム感情はもっと深い。ムハンマドの宗教に対する軽蔑の心は西洋文明の土台柱(a foundational pillar)の一つとなっており、そのことが認知されていないため事態はいっそう悪いものになっている。

・8世紀の叙事詩の時代から、西洋におけるイスラム教の描かれ方は反キリスト(anti-Christ)以外の何者でもなかった。それほど古くから西欧社会は自分たちを、ネガティブな存在であるイスラム教と対比されるポジティブな存在として考えてきたのであり、この対極的な捉え方は十字軍の時代に制度的に確立された。

・イスラム教が古い部族社会の因習を滅ぼして社会的平等を実現したことや、イスラムが神の非物質性を大切にし、だからこそすべての信徒が礼拝を通じて神と一体化できると考えていることなどを、欧米人はほとんど知らない。ムスリム全体が、米国民の敵として明白に位置づけられてしまっている。

記事はこう結ばれている。「古代から続くこうした偏見が、我々の歴史の底流を静かに深く流れている。その偏見に気づくことこそ、偏見から自由になるための第一歩である」。1200年以上続く両文明の対立を解きほぐすのは容易ではないが、世界の経済大国であり中立的立場にある日本こそ両者の仲介役を果たすべきだろう。それには私たち日本人も、両文明の“偏見の歴史”を知ることから始めねばならない。(司)

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