エジプトでの反政府デモが続く中、1月31日付の米紙ニューヨーク・タイムズが、ムバラク政権が崩壊した場合の、イスラエル外交や中東情勢への影響について報じている。

記事は、アメリカからの支援の基礎となっているイスラエルとの平和条約を、ムバラク後の新政権が踏襲する可能性はあるが、反対派でもっとも力を持っているのはハマスとの関係が強いムスリム同胞団であり、民衆の反イスラエルのムードは強いと分析。ムバラク氏が去れば、イスラエルは中東で孤立する上、エジプトが担ってきたイランへの重しの役もいなくなってしまうとの専門家の声を伝えている。

記事が伝えるように、レバノンでヒズボラ政権が誕生し、フセイン後のイラクではイランが影響力を強め、トルコも親米路線を修正しシリアに傾斜し始めるなど、イスラエルの中東での立場は時が経つにつれて狭まってきている。もし仮に何らかの形でムバラク氏が退場するようなら、次の政権が民主的かどうかに関わらず、イスラエルの立場は変化せざるをえないだろう。

現時点で飛躍した予測はするべくもないが、反米・反イスラエル世論が地域に根強く存在する以上、民主化を求める動きがアラブ諸国とイスラエルの対立を必然的に悪化させる可能性は排除しきれない。

1月29、30日、米オバマ大統領は英国やエジプト周辺国の首脳と電話会談し、「エジプト国民の願望に応える政府への秩序ある移行を支持する」と発言した。これまでイスラエル防衛に寄与するムバラク政権を支持してきた米国だが、国内外から批判が高まる中、遂にムバラク退陣を視野に入れ始めた。

オバマ発言は、エジプト国民を代表する暫定政権を発足させ、9月の同国大統領選を管理させることを目指すもの。リバティ本誌でも指摘してきたように、オバマ大統領は従来の米政府に比べイスラム勢力に融和的で、財政赤字から軍縮も望んでおり、イスラエル防衛に従来ほど固執しないとも見られる。追い詰められたイスラエルとイスラム勢力との衝突が激化しないよう、どう適切に政権を移行するかが今後の焦点となる。

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