安倍晋三首相とファイロンパイ欧州連合(EU)大統領、欧州委員会のバローゾ委員長の3人は25日、電話会談で経済連携協定(EPA)交渉を始めることで合意した。TPPに続き、EUとのEPAは、日本にとってさらなる発展へのステップとなるだろう。

欧州委員会によれば、EPAの締結によって、日本もEUも、GDPが1%前後押し上げられるという。相次ぐ金融危機で緊縮財政に走っているEUにとっても、経済復活のチャンスとなるだろう。

EPAとは「Economic Partnership Agreement」(経済連携協定)の略称で、日本が交渉参加を表明したTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)もEPAの一種だ。関税撤廃や企業の規制撤廃による自由貿易の推進に加え、投資環境の整備や知的財産権の保護を強化。経済取引を円滑にし、経済制度を各国間で調和させる中で、国を超えて経済活動ができるようにするための協定だ。

今回のEPA交渉の焦点の一つは、工業製品の関税である。EUは現在、日本に対し、自動車で10%、薄型テレビで14%の関税をかけている。しかし、2011年にEUとの間でFTA(自由貿易協定)を発効させた韓国の小型車の関税率は6.6%で、4年後には撤廃される予定だ。国際競争力を維持するためにも、日本の自動車業界からは関税引き下げを図りたいという声が上がっている。

一方、EUも日本への輸出障壁を減らしたいという思惑がある。鉄道や公共工事に関する規格が日欧間でずれていることがひとつの障壁となっているため、これを統一し、鉄道車両などの輸出を増やしたいという。また、TPP締結国の中で食料品の関税が下がった場合、日本への豚肉輸出国のデンマークや乳製品輸出国のオランダが不利になってしまう懸念もあるため、日本とのEPAを急ぎたいわけだ。

日本とEUは、政治的にも協力を深めようとしている。2001年に策定した政治協定の「日EU行動計画」は2010年に終了していることから、新しい政治協定を明文化する予定だ。EUは天安門事件以来、中国への武器輸出を制限している。電話会談で安倍首相が輸出制限の継続を要請したところ、EU側は「立場を変えることはない」と応えている。

TPPは、自由主義や民主主義といった環太平洋の国々による「中国包囲網」として機能すると期待されている。これに加えてEU圏の国々とのつながりを強めれば、「第二の中国包囲網」として機能することだろう。(晴)

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2011年12月11日付本欄 日中韓、FTA交渉へ 日本は自由貿易促進の旗振り役を目指せ

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2012年9月号記事 大川隆法 未来への羅針盤 EU金融危機の根本原因

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