経済協力開発機構(OECD)と世界貿易機関(WTO)が16日に発表した、付加価値の流れを追う新しい貿易統計(Trade In Value-Added database)によると、日本の最大輸出相手国は米国となることが分かった。

「日本の最大の取引相手は中国」という認識を払拭する興味深い統計である。

この「付加価値貿易」の統計では、どの国で生み出された付加価値が、どの国で最終消費されたかが分かる。例えば、日本から中国に180ドル相当の部品を輸出し、中国で完成させてアメリカに300ドルで輸出したとする。従来の統計では、日本が中国に180ドル、中国がアメリカに300ドル輸出した計算になる。しかしこれが「付加価値貿易」の統計では、日本がアメリカに180ドル、中国がアメリカに120ドル輸出したと計算する。

中国は部品を輸入して組み立て、最終製品を輸出する仕組みで貿易額を増大させてきた。2009年には日本の最大輸出相手国がアメリカから中国に移ったとされるが、この新しい統計では、同年の日本の最大輸出相手国はアメリカとなる。日本の貿易黒字額の多い順でもアメリカが1位で、その額は従来の統計より6割も増えるが、逆に、対中貿易黒字はほとんどなくなるという。

折しも、日経・CSISバーチャル・シンクタンクの緊急調査で、民間企業の役職者の間で中国の重要性が著しく低下していることも分かった。「生産拠点としての中国が日本経済に持つ意味」については、76.8%が「必要不可欠な市場だが重要性は減る」と回答。「中国は今後、外交・経済の国際ルールを守る国になると思うか」という質問には、68.5%が「外交ルールも経済ルールも守らない」と答えている。

日本の経済界は中国寄りの姿勢を変え、改めてアメリカとの関係を見直す必要があるだろう。

たとえば、現在アメリカはシェールガスやシェールオイル採掘のコスト削減を進めており、天然ガス生産と産油において世界一を目指している。エネルギー自給率4%の日本にとって、重要なエネルギーの安定供給元になる可能性がある。

また、日本政府は、TPP交渉への参加表明を先送りする方針を明らかにしているが、このTPPの本質には「中国包囲網」という意味もある。人権重視や著作権保護など、現在の中国が決して受け入れられないルールが多く含まれているからだ。TPP加盟国間で経済的なつながりが強くなればなるほど、中国に民主化・自由化を突きつけることになる。

これまで中国は、最大の貿易相手としての立場を使って日本を絡めとり、外交・軍事面においても強硬姿勢を取ってきた。だが、日本はこうした圧力に屈する必要はなく、「民主主義」や「自由」といった価値観を共有できる国とのつながりを強めていくべきだろう。(晴)

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2013年1月16日付本欄 アメリカの国益にもならない日本の右傾化論議(Part2)

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2013年1月号記事 幸福実現党の防衛力&GDP倍増プラン

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5189