文部科学省が福島第一原発から20キロ圏内(警戒区域)における事故から1年間の積算放射線量の推計値を19日、公表した。

この推計値は、事故から来年3月11日までの1年間、毎日8時間だけ屋外にいて、残り16時間は木造家屋内にいると仮定したもの。

これによると、推計した50地点のうち35地点が20ミリシーベルトを超え、最高は大熊町小入野の508.1ミリシーベルト。このほかにも200ミリシーベルト以上の地点が3カ所、100~200ミリシーベルトの地点が10カ所ある。

これだけ見ると、年間100ミリシーベルト以上の地点が14カ所もあって、「20キロ圏内は人が住むところではない」と思ってしまう。

ただ、注意が要するのは、事故直後は原発から大量の放射線が放出されたが、5カ月以上が経った8月18日の時点で、発電所西門の敷地境界で事故直後に比べて1000万分の1程度にまで減ったことが明らかになっている。1年間にこの場所に立った場合の被爆線量は0.4ミリシーベルトで、健康への影響はまったくないレベルだ。

これは、汚染水を浄化処理して原子炉の冷却に使う「循環注水冷却システム」がある程度機能してきているためで、8月から来年3月までの放射線量は、発電所周辺であっても自然に存在する放射線量に近づくと推定できる。

その意味で、現在の1000万倍もの事故直後の放射線量まで合算して「年間積算放射線量は500ミリシーベルト以上」と発表しても、ほとんど意味がない。

文部科学省は、不安を煽って、警戒区域に地域住民を帰さないように画策しているのだろうか。何とも不思議な仕事をやっている。単に今後1年間の放射線量の推計値を出せば済む話だ。(織)